フロリアンさんが筆頭著者の論文が受理されました!おめでとうございます!

フロリアンさんらは赤潮発生域として知られる高知県浦ノ内湾で2017年1月から1年半の期間に採取されたサンプルを、最新の環境ゲノミクスで解析し、真核微生物、原核生物、イミテビラレス(巨大ウイルスの1目、真核微生物を宿主とする)の長期群集動態を観察しました。その結果、どの微生物群集も季節変動を示すことを明らかにしました。興味深いことに、春と秋は環境条件が類似しているにもかかわらず、冬と夏と同様に、群集構造が大きく異なっていました。このことは、これまでのフェノロジー(生物季節学)から予想できたことですが、微生物にも、マクロな植生と同様に四季があることを改めて示しています。世代交代が短く(数日程度)、かつ環境因子によって群集構造が決定されると考えられがちな微生物群集構造ですが、長期(一カ月以上)のマルコフ性が重要であることを、本研究は示しています。微生物は1年経つと類似した群集構造に戻ることも明らかになりました。ただし、類似といっても100%同じ群集構造は1年経っても戻ってこず、50%程度しか回復しません。古典の「方上記」にある「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず〜」と同様、微生物群集構造も、今日見たものは、もう二度と見ることはできないのです。ミクロの世界も一期一会ですね。群集変動の速度が群集により異なることも明らかになりました。具体的には、ASV (amplicon sequence variant) レベルでの群集構造の変動速度はウイルス>真核生物>原核生物となっていました。「微生物群集構造記憶」に差があるのです。ウイルスの存在は宿主の存在に依存しますが、複数のウイルスが同一の宿主に異なる時期に感染する結果、このような変動速度の差が生じるものと論文では議論が展開されています。また、フロリアンさんらは、コンピュータ解析により、赤潮藻類のカレニアやシャトネラに感染するウイルスの候補配列も見出しました。今後のウイルス単離が期待されます。本研究は京都大学農学研究科の吉田天士先生、高知大学の長﨑慶三先生、九州大学の林哲也先生、高知県水産試験場との共同研究により実施されました。

詳しくはフロリアンさんらの下記の論文(FEMS Microbiology Ecology誌)をご一読下さい。

Prodinger, Florian; Endo, Hisashi; Takano, Yoshihito; Li, Yanze; Tominaga, Kento; Isozaki, Tatsuhiro; Blanc-Mathieu, Romain; Gotoh, Yasuhiro; Hayashi, Tetsuya ; Taniguchi, Etsunori; Nagasaki, Keizo; Yoshida, Takashi; Ogata, Hiroyuki. Year-round dynamics of amplicon sequence variant communities differ among eukaryotes, Imitervirales, and prokaryotes in a coastal ecosystem. FEMS Microbiol. Ecol. (2021) — Link