カッパウイルス(PkV RF01)のゲノム解読。解析論文がJournal of Virologyに受理されました。ロマン先生が筆頭著者で、ルス-アンヌ先生(ベルゲン大学、ノルウェー)との共同研究です。おめでとうございます!
ロマン先生とルスーアンヌ先生のチームの共同研究です。海洋に広く部分布するプリムネシウム目のハプト藻Prymnesium kappaに感染する巨大ウイルスPkV RF01(プリムネシウムカッパウイルスRF01が正式な名前です)のゲノムと構造が明らかになりました。このウイルスのゲノムは藻類に感染するウイルスの中でも最長サイズを誇り、1.4Mbです。遺伝子も沢山コードしています。興味深いことに、エネルギ―代謝に関わる遺伝子を沢山コードしていました。TCAサイクルや電子伝達系で働くコハク酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の全て(SdhABCD)をコードしており、脂肪酸のベータ酸化に関わる遺伝子も見つかりました。近年、こうした代謝遺伝子がウイルスに見つかることが多くなっており、「ウイルスはエネルギー生産に関わらない」という古典的な見解を覆す一例となります。また、PkV RF01の粒子は400nmで、タンパク質で構成されたカプシド(殻)の中に、複雑に入り組んだ膜構造を保持し、その中に、今まで単離されたウイルスでは見たことのないような筒状の構造が発見されました。その構造体の機能はまだ明らかではありません。PkV RF01の感染は非常にゆっくりとしていて、宿主殺傷性が低い特性があります。このようなK戦略(急激な増殖をしない)ウイルスは、これまで単離することが難しかったタイプのウイルスです。しかし、海洋には沢山いる可能性があると言われています。PkV RF01はK戦略ウイルスの研究モデルとして今後、重要な材料となります。
Blanc-Mathieu R., Dahle H., Hofgaard A., Brandt D., Ban H., Kalinowski J., Ogata H., Sandaa R.-A. A persistent giant algal virus, with a unique morphology, encodes an unprecedented number of genes involved in energy metabolism. J. Virol. (2021) — accepted, bioRxiv,
doi: https://doi.org/10.1101/2020.07.30.228163 (2020).